『バディミッション BOND』がイカれたレベルで面白いので、ちょっと感想書かせてほしい
『バディミッション BOND』は、あまりにも王道に「繋がり」を描いた傑作だ。
そして言いたい。ここまで徹底的に「人間」を描き出せる作品はイカれてる、と。
クリアしてしばらく、頭から離れないゲームはしばしばある。キャラクターの生き様に心奪われたり、エンディングのその先に想いを馳せたり。大なり小なり「キャラクター」「ストーリー」に魅力を感じるアレだ。
『BOND』も漏れなくこの類の作品──なのだが、ここまで狂った作品はなかなかない。人生を持っていかれる。
マジでヤバい。本当にエゲツない。
ということで、少しでも『バディミッション BOND』の魅力をお伝えしてみたい。頑張る。いやマジでヤバい作品なんです。
未プレイの方が楽しんでいただけるよう、ネタバレは無しで。それでも魅力が伝わるように、少し切り込んだ話も織り交ぜながら進めようと思います。
女性向けゲームの金字塔の新たな挑戦
まずは本作の概要を説明しておきたい。『バディミッション BOND』(以下バディミ)は『アンジェリーク』や『遙かなる時空の中で』『金色のコルダ』など、数々の女性向けゲームを開発してきた「ルビーパーティ」が開発を手がけ、『アイシールド21』や『ワンパンマン』を手がけた漫画家の「村田 雄介」氏がメインキャラクターデザインを手がけたADVゲームだ。
これだけ見ると、女性向けなのか?でもキャラデザは男性向け?など、自分がターゲット層なのか迷う人もいるかもしれない。先に言及しておくと、この作品は「男女問わず包丁で滅多刺しにされる」ヤバい作品だし、明らかに片方の性別に向けた描写はないので、そこは安心して欲しい。
警官、怪盗、忍者、詐欺師。生きる世界も立場も異なる4人が、謎の組織に迫るべく、チームを組む──(公式HPより引用)
マンガ風の表現×フルボイスで描かれる4人の男たちは、各々の思惑を抱えながらも、組織を追ってチームを結成する。本作はそのストーリーに合わせて展開される「捜査」「潜入」が売りのADVであり、感覚としては『逆転裁判』『ダンガンロンパ』に近い。『バディミ』も漏れなく推理要素が盛り込まれている。
この推理要素は決して難しくない。推理に使われるキーワードはオレンジ色で表示されるし、丁寧な誘導の上で推理ができる。この作品のシナリオに興味がある方なら、問題なく進められるはずだ。求められている能力を強いてあげるなら「記憶力」かな、というくらい。
物語を通して1つの舞台がメインとなるため、サブキャラクターやキーワードにも愛着が湧いてくるのが面白い。それぞれが物語の本筋に絡むことはなくとも、それを構成する世界観に没入できることで、よりストーリーを楽しむことができる。
潜入にも時間制限は無く「捜査メモ」を見返しながら進められるため、難易度は高くない。中盤からは頭を使う仕掛けもあるが、捜査メモを確認していけば解ける範囲だ。
そしてこの「捜査」「潜入」をバディ単位で行うため『バディミッション』と称されるわけだ。特定の組み合わせで捜査・潜入することで開放される「バディエピソード」もあり、どの組み合わせで潜入するか考えるのもまた楽しい。
難しかったり、操作性が微妙であるのは、今まさに言及した「バディの組み合わせ」と「QTE要素」だ。
どの組み合わせで捜査すべきか、の情報はあまり無く、場合によっては複数回周回する必要もある。スキップ機能やセーブ&ロード機能を活用すれば時短は可能だが、本編と同時並行で「バディエピソード」「サイドエピソード」を読み進めた方が魅力が増すため、周回が面倒な人は攻略を参照してもいいと思う。この2つのエピソードは、是非開放され次第読んで欲しい。物語への没入度合いが変わってくる。
QTE(クイックタイムイベント)は、時間内に指示の通りにボタンを押したり、スティックを倒したりするアクションだ。
音ゲーに慣れていたり、QTEのあるゲームに慣れている人は問題なくプレイできると思うが、不慣れな人にとっては少し大変…だと思う。高難易度ではないので安心して欲しいが、あまり慣れていない筆者は結構驚いた。急に画面に指示が出てきて焦ったりする。
失敗が続くと評価が下がり「サイドエピソード」が開放できないこともあるが、クリア後でもセーブ&ロード機能を駆使すればやり直しが出来るため、困った時は活用して欲しい。
簡潔にゲーム性の良し悪しの話をしたが、難しい部分を含めても是非プレイして欲しいゲームだ。次からはその魅力について語りたい。
「正義・悪」で表すことのできない、徹底的な「人間」の追求
オタクの中でよく話題になるテーマがある。「正義の反対は正義なのではないか?」「正義とは、悪とは何か」という命題は、そう簡単に答えが出ないものだと思う。
『バディミ』は果敢にもそこに切り込んだ作品だ。簡単に表すことが出来ない「正義」という問題に答えを出そうとした作品だと感じる。
バディミにも当然ながら「悪」は存在する。チームの中にも怪盗と詐欺師という「悪」は存在するし、彼らの敵対する「悪」も存在する。主人公のルークは「正義」の道を進む存在だ。一見してその対比が描かれていると感じるかもしれない。
けれど、そうではない。彼らは「正義」「悪」という括りで表現されていない。彼らは徹底的に「人間」として描かれている。それぞれの過去を、信条を持ち、互いに交わることで前に進めたり、立ち止まってしまったりする。
言葉とは難しい。人間は言葉を使って世界を切り取り、自らの手で表現しようとする。
けれど本当は、表しようがないものだってたくさんある。人間の性質なんてまさにそうだ。「優しい」「元気」「怒りっぽい」──ごく一部を表すことが出来ても、本質は色々なものが入り混じって複雑だ。
バディミのキャラクターは、そんな人間味を持っている。二元的に表すことのできない「彼らだからこその風味」を持っている。メインの4人から、たくさんのサブキャラクターまで全て、だ。
それは綺麗ではないかもしれない。濁っていると言えるのかもしれない。けれど、だからこそ愛おしいと思える。キャラクターを超えて、人間として表す。これほどの描き方をやってのけた製作陣は「イカれてる」と、改めて言及しておきたい。
もうめちゃくちゃ面白いからいい所並べる!
堅苦しく書くのが疲れたので、とにかく面白いところを並べるぜ!
・「バディ」の描き方がめちゃくちゃ王道!極まった王道は人類を殺す。6組(4人の組み合わせ)がそれぞれ濃く描かれてしんどい。
・サブキャラクターからチョイ役のモブまでめちゃくちゃ魅力的。作り込みの熱量がエゲツない。
・同時多発的に精神を抉る関係性を突きつけられる。エピソード開放のタイミングまで計算され尽くしてる。狂気の沙汰。
・ネタとシリアスとエモのバランスがすごい。情緒が壊れる!
・いわゆる「悪役」の幅が広い。前述の通り「悪」と綺麗にラベリングされているわけではないが、人間としての解像度が高く、絶対にお気に入りのキャラクターと出会える!
きっと全ての結末を見た後、あまりにも完成度の高い物語に呆然とするはず。それほど1つの物語として作り込まれてます。ヤバいよ。
一緒にこの地獄まで落ちてきて欲しいので、少しでも気になった方は体験版をどうぞ!本編もカタログチケットの対象なので、実質5000円で買えるよ!
よくある質問
フォロワーにちらほら頂いた質問をぶら下げました。気になることがあれば追記しますので、お気軽にどうぞ!
Q. 大の男の尊厳が踏み躙られるって聞きました
A. 否定はしません
Q. 結局のところ女性向けなの?
A. 感覚的には「女性も視野に入れてるジャンプ作品」に近い…? 女性だからこそ、この作品に見出せる魅力もあると思う。プレイしてて性別を指定されてる感覚はないです。
Q. 救いはありますか?
A. 全体的に見れば、容赦なく命は失われます。救いがあるかどうかを判断するのはプレイヤー次第ですが、ENDを見た時の自分は「すげえ作品に出会ってしまった」でした。本当に面白かった。
Q. 総プレイ時間は?
A. 筆者はエピソード全回収に30時間くらい。かなり手早く進めた自覚があるので、結構短い方かもしれない。バディの組み合わせの会話差分を楽しんだり、のんびり進めると必要時間は増えていくかなと!
Q. ルビパとかワンパンマンとか触ったことないけど平気?
A. 自分もそうだったから安心してください!乙女ゲームはやったことないんですけど、今回のでルビパさんに心奪われちゃったので他作品も触ってみようと思ってます。有識者はおすすめ教えてください。
Q. 略称ってバディボ?バディミ?
A. 公式Twitterが「バディミ」って言ってました!宗派変えます。初稿から訂正です。
Q. 難易度もう一回教えて!
A. 推理パート(捜査・潜入)→易しめ
アクション(QTE)→慣れてれば簡単だけど、不慣れならちょっと大変かも。苦手でも何とかなるレベル。QTEにも推理要素が絡んだりするので、事前に捜査メモを確認して覚えておくとスムーズ!